2011年3月20日日曜日

開発手法が一味違う、奥深きゲームソフト業界を攻略する――コーエーテクモの松原社?

 「信長の野望」のコンテンツさながら、これを開発するコーエーテクモホールディングスは、群雄割拠のエンターテイメントコンテンツ業界で長年にわたりリーディングカンパニーの地位を守っています。コーエーとテクモが経営統合したのが2009年の4月、2010年は新たに組織の再編成をしてめまぐるしく変わる市場環境に挑みます。

 その代表取締役社長
を務める松原健二さんは、日立製作所でエンジニアとしてのキャリアをスタート、米国MITのスローンでMBAを取得した後、外資のOracleに転職、さらに、全く経験のなかったゲーム業界のコーエーで社長を務めるキャリアの持ち主です。

 松原さんに最初にお会いしたのは、ファーストリテイリングの最初のe-コマースプロジェクトをネットイヤーグループが
オラクルから任されたときでした。ネットイヤーグループの代表的プロジェクトでもあります。あれから10年がたち、松原さんに連絡をとった理由は、純粋な国産の代表企業から外資の大手、エンジニアがMBA、そして技術とはいえ未知であるゲーム業界への転身という経歴から、相反する組織や業務を経験した人の言葉を聞きたいという興味からです。

 温
厚なお人柄だからこそ、この幅広い経験に柔軟に対応しているのがよく分かります。群雄割拠のゲーム業界におけるこれからのコーエーテクモの戦略をたっぷり語ってくれました。

●国産大手でモノづくりを学び、外資でその勘を生かす

 純粋な国内大手総合電機メーカーでキャリアをスタートさせたことは、松原さんにとってよい選択だったそうで
す。モノづくりが面白いと思わせてくれたのは日立だったとおっしゃいます。ところが、松原さんの所属する工場からは30年来で初めてのMBAということで、留学はキャリアパスの選択肢が広がるというよりも、どういう進路がいいか分からない、という状態になり、退社してシリコンバレーの大手ビジネスソフト開発Oracleに入社することになります。

 外資 rmt arad
系大手の日本法人の経営陣が必ずと言っていいほどぶつかる壁は、本社の中央集権ぶりと日本法人の権限のなさです。わたしの経験上も日本企業が米国に進出した際のマネジメントは、かなり地方分権色が強いのですが、米企業傘下の日本法人はその反対です。この点に関して、オラクルでの様子を聞くと、エンジニア出身の経営者松原さんは、その軸足の大切さを教え
てくれました。

 Oracleでは、オリジナルパッケージの開発は米本社が行い、日本支社である日本オラクルでは、ローカライズを担当します。ローカルで対応できない開発ももちろん多く、それを米国側に対応させることは難しい。一方で、日本側の営業は、このニーズを開発できれば案件がクローズすると必死なのですが、それは、オラクルのパッケージ上で rmt latale
動くアプリケーションでやるべきことも多々ある??????。そんな勘所が分かるのもモノづくりの現場出身だからこそ、すべてを本社丸投げにしておきる摩擦を事前に防ぎ、全体最適を計ることもできたようです。

●オンラインゲームはコミュニティー

 ソフトウェアとはいえ、経験のないゲームソフト、しかもご自身はそれほどのゲーマーでないとお rmt 信長
っしゃる松原さんが代表を務めるにあたって、その背中を押した1つの要因は、オンラインゲームというインターネットサービスでした。オラクルで培った経験とは一見ずいぶん違うようですが、インターネットサービスに変わりはありません。クライアントがあり、サーバがあり、データベースがありと言う意味では同様なのだそうです。

 コーエーの成功は
、最初のタイトルにあります。これが『信長の野望Online』です。発売までに長い歳月を要したものの、2003年6月のローンチから7年、今も3万数千人がお金を払ってくれるタイトルはそうあるものではありません。ゲーム業界ではヒットを飛ばすことが生き残る秘訣(ひけつ)であることは間違いなさそうです。

 さらに長く続く秘訣として、オンラインゲー UGG
ムはコミュニティーであるということです。通常のパッケージソフトのゲームはクリアして終わりですが、オンラインは仲間と遊ぶのが中心の毎日です。MMO(Massive Multiplayer Online)というカテゴリーで、信長の野望の場合は、同時に5000人がプレーすることが可能です。7人でチームをつくってモンスターと戦いますが、長いものになるとみんなで2時間プレーする
こともあるそうです。

 常に、新しいものを配信できる。だから、飽きさせない。ユーザーがモデレーターとなりチームを作り、戦略を立てるなど、自分たちで遊び方を膨らませることもできます。なるほど、これは、パッケージソフトとは全く違った面白みがあります。また、コミュニティーを活性化するために、コーエーテクモが提供するゲームマスター
がおもてなしの役割を果たしています。ユーザーの質問への返答や、イベントの企画など、時にはけんかの仲裁に入ることもあるそうです。

●開発が一味違うゲームソフト

 ゲームソフトの開発は、普通のソフト開発とは一線を画します。通常は仕様書を書いて、コーディングフェーズがあり、バグをなくすという、言わば、ウォーターフロー型。し
かし、ゲームの品質の判断基準というのは「面白いか面白くないか」に尽きます。だから、途中で面白くないと思ったら、戻る作業が必要です。PDCAが早いとも言えます。一般的にいうと、アジャイルに近い。

 しかも、プログラムだけではなく、音と映像も大きい要素です。ゲームはコンテンツなので、プロデューサーとディレクターがいて、音と映像とゲ
ームデザインのチームがあって、グラフィックスだけで100人を投入することもあり、そのダイナミズムのまとめ役がディレクターです。はっきりとしたヒエラルキーが出来上がっており、映画製作にも似ているそうです。

●合併の効果

 合併の経緯は、旧テクモにスクウェアエニックスがTOBを仕掛けたのですが、コーエーとテクモの創業者同士が既
知の仲ということもあり、両者の合併が成立しました。テクモは海外売上高が大きいが、コーエーは国内比率が高い。コーエーにとっては、欧米向けのつくり方を学べる機会になります。一方、コーエーはコストやスケジュールの管理が優れているのでテクモに学習効果が生まれ、よい補完関係にあるようです。

 他のソフトウェアよりも格段にスケールメリ
ットがある業界でもあります。グラフィックスは、ひとつのタイトルで1000人月というものがある。それも、100×10カ月ではなく、500×2、3カ月というものです。外注するものの、人件費を標準化して有効活用できる。技術の進歩が早いのもこの業界の特徴。スケールを抱えることはそのままラーニングカーブにつながります。

●ゲーム業界の行方

 
ゲーム業界ほど行方の分からない業界はありません。それは、どんなゲームが「当たる」か想像がつかないという一般論からも言えることなのですが、わたしは、任天堂がWiiを出したときに、頭が混乱してしまいました。プレイステーションとXbox360がハイエンド市場で凌ぎを削っていたときに、Wiiは突然、ゲーム業界にカジュアルな概念を取り入れました。家族で遊
ぶゲーム、初心者でも楽しめるゲーム、そこで求められたのは表現技術よりもユーザーインタフェースでした。しかし、わたしは、みんながその成功を賞賛しているのを横目で見ながら疑問を禁じ得ませんでした。

 家族に代表されるような新しいゲームユーザーは、ゲームに思い入れがあるのだろうか?

 それ以来、デバイスもインタフェースも多
様化しています。しかし、ハイエンドは相変らず顕在ですが、新しいマジョリティーであるカジュアルなゲームのユーザーも顕在です。ゲーム会社はどこに向かえばいいのでしょうか?

 松原さんは、PCやゲーム機だけでなく、スマートフォンのゲーム業界への参入により、市場はさらに混沌としてきたと指摘します。しかし、市場変化があることを十分理解
しながらも、コーエーテクモとしては、ゲーマーというユーザーを大切にしていく方針であることに変りはないそうです。

●スマートフォンはコーエーテクモにとってタフな市場

 スマートフォンはタフな市場です。コーエーテクモにとって、最も大きなハードルは価格です。パッケージゲームは、5000?7000円という価格帯が主流ですが、スマートフ
ォンは従量課金か数百円という価格。勝敗が決まるのはビジネスモデルでなく、完全にコンテンツです。

 コーエーテクモが得意とするゲームソフトは、100人の市場で10人が5000円を払ってくれるというものです。ARPU(Average revenue per user)の何%がPaid Customerになるかということが問題になり、また、ソーシャルゲームにおいては、コアなゲームで
ARPUが飛びぬけて高いものや、長続きするかが問題になります。

 しかし、スマートフォン市場では、アクティブユーザーをどう続けさせるかよりも、潜在ユーザーをどれだけ新規ユーザーにして、ARPUをあげるかが問題となるでしょう。スマートフォンなどコミュニティー要素があるがローエンドなマーケットでは、100人の市場で30人か50人が、数百円を
払うことを狙わないといけません。コーエーテクモにとっては、新市場といっても過言ではない、しかし、オンラインゲームには実績があり、0からのスタートではないことも確かです。

 スマートフォン対応はまだ数タイトルです。いずれも既存ソフトを活用して開発しています。これからは、スマートフォン専用のアプリの制作にもかかりますが、パッケー
ジ市場と全く異なるために、違うアプローチが必要です。パッケージソフトは、例えば、5万本を出荷すると、それが数億円の売上高をもたらします。高くて1000円のスマートフォンアプリが同様に売れても5000万円ほどですから、かけられるコストには大きな隔たりがあり、同じ作り方はできない。作り手は自然にパッケージ開発に興味が向いてしまうものです。


●パッケージと海外が鍵

 日本のコアゲーマー市場はほぼフラットで、今後は少子化で自然減が見込まれています。一方、欧米のゲーム機市場は、10年前の倍以上になっているのです。

 コーエーテクモの市場戦略は海外に向いています。市場は新しいタイトルを求めています。簡単な操作で難しいことができるタイトルです。既存シリーズ
は続編を出すものの、それだけで会社の成長は期待できません。新しいタイトルのための投資をしていくつもりです。

●要はプロダクトポートフォリオ

 松原さんは最後に、こう語ってくれました。今後、ウェブがもっと発達すると、お客さまにさらにメリットが出てきて、たくさんのアーカイブにアクセスできるようになります。新しいゲームを楽
しむと同時に、古いゲームをする人も増える。しかも価格は安いので、実はライバルは他社ゲームではなく、自社の古いタイトルかもしれません。

 しかし、そういう時期を乗り越えて、新しいタイトルに投資しなければ、会社の将来はありません。スマートフォンも作り方は違うが、投資が必要な分野です。パッケージは相変らずコーエーテクモのコアプロ
ダクトで、海外への積極的な展開を仕掛けるつもりです。要はプロダクトポートフォリオなのです。

 会社として、統合は初めての経験で、外にも中にも成果を見せるのは簡単なことではありません。株主は早く結果を出せと言うが、思ったより時間がかかると考えています。両社は、ゲームづくりにおいても違う言葉を使うように、文化も違います。社員が
納得しないと統合はすすみません。わたしの役割は、ここを目指すということを理屈の上で分からせること、それが頭に入れば、自然と統合は進んでいくでしょう。【石黒不二代(ネットイヤーグループ),ITmedia】

(ITmedia エグゼクティブ)

引用元:RMT(リアルマネートレード)専門サイト『RMTワンファースト』

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